【腸内フローラ移植】治療とその必要性について説明します!

23 7月, 2020
便に含まれる腸内細菌を移植することで腸内環境を修復することが可能です。これは成人および小児患者にも治療ができ、有効性が確認されています。

腸内フローラ移植は細菌療法の一つで、まだ実験的な療法であるため問題視されていることも事実です。これは健康なドナーの腸内微生物を、炎症性腸疾患など結腸微生物関連の病気を患う患者に移植するもので、健康なドナーの便を投与するという治療です。

クロストリジウム・ディフィシル感染症:便移植の成功例

クロストリジウム・ディフィシルは腸内環境に生息する細菌です。一般の人はこの細菌があっても何の問題もありません。それは細菌そのものが疾患の原因ではないからであると、専門家は説明しています。

しかし特定の条件下でこの細菌は毒素を放出し、それが病気を引き起こします。クロストリジウム・ディフィシル感染症にかかると腹痛や下痢の症状が見られ、深刻な場合は感染による脱水症状により入院が必要になることもあり、また命に関わることもあるのです。

2018年米国において、一万人もの患者が腸内フローラ移植を受けたことが報告されています。この治療法はけして最新のものではありません。実際臨床ガイドラインは2013年から設定されており、この治療の適用は「再発性または難治性」のクロストリジウム・ディフィシル感染症の患者だけに限られます。

つまり再発性感染の患者の中でも抗生物質治療に反応しない場合のみとなります。さらに2018年以来、新たに成人と小児患者にもこの治療が行われるようになりました。

腸内フローラ移植

腸内フローラ移植がクロストリジウム・ディフィシル感染症以外の疾患に適用されるのは、臨床試験という形でのみ可能です。

腸内フローラ移植のプロセス

この治療を施すにはいくつかの方法があります。最も一般的な方法は、糞便バンクから提供してもらい大腸内視鏡検査という形で行います。この手順は概して安全と言えます。これに関しては、お腹が張る、ガスが溜まる、微熱が出るなどの不快感を最小限に抑えられると専門家から報告されています。

糞便バンクは、ヒト組織バンクなどと同じように管理されています。まず医療専門家がドナーの便に、強力な病気を引き起こす微生物がないか検査します。そしてドナーの血液を調べて何かしらの感染病がないことも確認します。そこで糞便バンクから最適な腸内フローラ移植のドナー便を確保するのです。

二つ目の方法は、患者の二親等以内または友人など第三者ドナーの協力を得て医師が移植を行うことです。これは例外であり、医師の経験と判断がある場合に施行されます。

第三の選択肢は、便に関連する製品を通して行われます。これらは医薬品形状または抽入する方法で、全ての微生物でなく、微生物の組み合わせ等が厳選されます。

クロストリジウム・ディフィシル感染症への腸内フローラ移植の効果

毎年アメリカでは45万件もの感染が報告され、2万9千人が死に至ります。その内の20%の患者は抗生物質治療では完治せず、感染は何度も再発します。

小児患者も含めてこれらの患者の中で、腸内フローラ移植による治癒率は80~90%なので、一回の治療で、感染再発の患者のほとんどが完治するということになります。しかし、一回の移植では治らない患者もいます。

この治療による合併症とは

全般的に見て、この治療は安全で忍容性のある治療であり、人の命を救うのに役立ちます。非常に重要な点は、患者がけして家庭で試してはいけないということです。これは訓練を受けた医師によってのみ、充分に整備された環境で施行される治療です。

腸内フローラ移植

残念なことに、腸内フローラ移植が危険になってしまうこともあります。糞便は消化されていない廃棄物と有益で多様な微生物の混合物で、腸内生態系に新たなエコシステムを作り出します。しかしこれには細菌、真菌、身体に「優しくない」ウィルス、または潜在的に病原性のあるウィルスも含まれます。

腸内フローラ移植を他の疾患に利用する

医療専門家たちはこの移植技術によって、糖尿病など他の疾患を治療することに比較的良い結果を出しています。小児患者に対して、この治療法は炎症性腸疾患に利用されます。臨床試験では、末期肝疾患、アルツハイマー病、多発性硬化症、様々な癌、喘息、アレルギー、心臓病などの疾患治療に腸内フローラ移植が利用されています。

専門家はこれらすべての病気が、人間の腸内エコシステムを構成する細菌が変化してしまう事と関連していると捉えてきました。

スーパードナー便の存在

最後にスーパードナーの存在について、つまり患者の臨床的改善においておそらく平均2倍の成功率を達成しているドナー便が存在するそうです。腸内フローラ移植(糞便微生物移植)はこれからも研究が続けられ、将来安全な範囲での治療の発展が見られるかもしれません。

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