移行対象:愛着があって子どもが手放せないおもちゃ
子ども達がぬいぐるみや毛布に対して、特別な愛着を持ち大好きになってしまうことってありませんか。子どもは大好きなものを肌身離さず持っていて、まるでなくては生きていけないようです。しかしこれらの移行対象は、心理学的に見て何を象徴しているのでしょうか?
移行対象とは?
小児科医、精神分析医であったドナルド・ウィニコットは、「移行対象」とは子どもが初めて自分とは分離した所持物を認識するということだと定義付けました。
移行対象に対して、子ども達は何かしらの愛着を感じるものです。この特定されたものに対して特別に愛情を示し、いつもそれを持ち歩きます。特に子どもが不機嫌になったり疲れている時に、その移行対象に頼る傾向があります。
子どもの移行対象に対する態度は、単に遊んでいるだけでなく、むしろ独占している関係です。しっかり手でつかみ、口にくわえ、キスしたり、自分の身体にすり寄せたり、床に投げつけることもあります。
移行対象を持つことは、とても正常な行動であり、子どもの健康的な精神的成長の一部です。 これらの対象物は、子どもが母親から離れる段階において重要な機能を果たします。そして子どもが一個人としての自己意識を持つための大事な役割もあります。
しかしながら、そのプロセスは各個人で違いがあり、全ての子どもが移行対象を持つようになるという訳ではありません。
移行対象の特徴
移行対象は多種多様であり、それぞれの子どもによっても違うものです。そうとは言っても、移行対象には基本的に共通する特徴があります。
- 手触りが心地良く、スムーズでやわらかい。これはハリー・ハーロウの愛着実験に出てくる、布製の母親代役に直接関係しています。研究によると、すべての幼い生物は慰めと安心感のために、柔らかいものに愛着を寄せたいという感情を先天的に持っているそうです。
- 子どもは移行対象を任意に選ぶ。両親や世話をする人が愛着を持つ対象を押し付けることはできません。私達大人にとっての好みが何であれ、とにかく移行対象は子ども本人が選ばなければいけません。
- 移行対象はかけがいのないもの。移行対象を大人が選んであげることは不可能であり、また子どもの移行対象を代替品で済ませることもできません。お気に入りのぬいぐるみなどを失くしてしまうと、子どもはとても悲しくなるでしょう。両親が他のもので代わりにしようとしても、子どもの悲しみはぬぐえません。他のおもちゃなどに移行対象を変えるかどうかは、その子ども次第です。
- 移行対象には特有の匂いがある。この嗅覚的指紋によって子どもは馴染み深さを感じているのです。そこで移行対象はできれば洗わない方が良いでしょう。
- 切り離すことができない。小さな子どもはお気に入りをどこにでも連れていき、特に寝る時間には不可欠です。移行対象を取り上げたりすると、とても悲しくなったり辛くなったりします。子どもの成長と共に、これらの移行対象は少しずつその意味合いが薄れてきます。
移行対象の役割とは?
まず移行対象は、子どもの成長における主要な移行段階を表します。新生児にとっての母親は、完全に分離していない存在です。つまり、子どもは母親が自分とは分化した状態であるとは感じていないのです。
成長と共にこの分離を理解できるようになり、自分と母親は離れていることを認識できるようになります。さらに、母親はいつでも100%自分のニーズに答えることはできない、ということも分かってきます。
このような変化段階を通して、移行対象は子どもの傍で母親と同じような安心感を与えてくれます。 赤ちゃんが母親に対していだく愛着の代わりとして、母親の不在時に一定の機能を果たします。
ということは、移行対象は嬉しい気持ちと安心感を与えてくれるのです。小さな子どもが分離不安を感じる気持ちをコントロールして、 感情的に自立し、周りの状況に対応できるようになります。
移行対象が重要な時期
これらの心理的機能が重要になってくるのは、特に子どもが辛い時や疲れている時、そして寝る時間です。そういう場合、子どもの愛着を持つものへの必要性が高まります。
子どもが一度移行対象から離れていても、特に大きな出来事があると、また移行対象に戻っていくことがあります。例えば兄弟が生まれる時、学校が始まる時、または引っ越しをした時などです。
子どもは大抵4か月から6か月の頃に移行対象を持ち始めます。それからその関係は、子どもが3歳か4歳前後になる頃まで続きます。
子どもが自分の感情をコントロールできるようになり、少し自立してくると、移行対象との関係がもっと遊びに近づいてきます。または別のものへの興味がわいて、自然と移行対象を卒業できるようになるでしょう。
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