言語習得に関する理論:子どもが言語を習得するプロセス
言語習得のプロセスを説明するアプローチや考え方には、さまざまなものがあります。今日は最もよく知られる言語習得理論について見ていきますので、ぜひ続きを読んでみてください。
幼児の言葉は、前言語段階の間に始まります。これの段階は子どもが誕生した時点から生後約12か月くらいまでの期間です。それから子ども達は言語段階に入り、もっと複雑な言語習得のプロセスが始まります。言語を機能的レベルで操ることができるようになっていきます。
言語習得の理論
スキナーのオペラント条件づけ理論/行動主義理論
B・F・スキナーは、言語発達は外的刺激によってのみ行われるという見解を持っていました。このアメリカ人心理学者および作家によると、言語習得はオペラント条件づけメカニズムによって起こるそうです。
最初に、子ども達は大人が使う言葉の音をまねしようとします。そして特定の言葉と、さまざまな状況、対象物、行動などを結びつけるようになるのです。
語彙や文法のルールの習得も、このオペラント条件付けを通して行われます。子どもが言葉を適切に使ったり新しい言葉が言えた時に、子どもと関わる大人がその子をほめたり注目したりしますよね。これが子どもにとっては褒賞となります。
ですが、文の構造が間違っていたり言葉の発音を間違えたり、あるいは悪い言葉を言ったりした場合は、大人は子どもを叱ったり、間違った言葉に対し、それは違うよと伝えたりします。
「行動の結果が、それがもう一度繰り返される可能性に影響する。」
―B.F.スキナー―
言語というのは非常に複雑なもので、行動主義理論だけでは全てを説明できない部分もあります。この理論では各段階における言語習得についてカバーしていないのです。この理論では言語を単なる合計だと捉えています。
そして全ての子ども達が、言語発達において似たようなプロセスを経験するかという点について説明していないのです。ですが、このアプローチのおかげで、後に続く研究が、この内容や子供の話し方について完全な説明ができるようになるでしょう。
チョムスキーの心理言語学理論:言語生得説
チョムスキーの見解では、言語発達は人間が持って生まれた生得的な構造であるとしています。この考え方には言語の「言語獲得装置」という要素があります。これは生物学的、遺伝的要素として人それぞれに先天的に存在し、言語の習得と発達を決定づけます。
この装置から始まって、子ども達はしっかりとした構造の文章を作り出し、文法規則の使い方を理解することができるようになります。
先天的仮説によると、言語と思考には何ら関係がなく、それぞれが個別に存在するとされています。そのため、最近の研究はこの仮説には同意していません。しかし今日でも、人間には生来的に言語習得の傾向があることは、専門家により認められています。
ブルーナー理論:実用的なアプローチ
ブルーナーの方向性は、構成主義と社会的相互作用を考慮した3つ目の研究理論を追及することです。これは、不可能な理論と奇跡的な理論(スキナーの言葉の移動とチョムスキーの先天性理論)、2つの言語習得理論のギャップを埋めようとしたのです。
アメリカの心理学者であるブルーナーは、社会的相互作用の研究に専念していました。彼は、適切な相互作用の枠組みがあってこそ、学習が存在するものと信じていました。これは言語習得の足場と呼ばれています。
さらにブルーナーは、言語獲得支援システム(LASS)という概念を導入しました。このサポートシステムについて、大人が小さい子に話しかける際の赤ちゃん言葉の説明をしています。これが、子ども達が文章構成と言語の法則を抜き出すことに役立っています。ブルーナーは子ども達が母親と関わることで、話すことを学習するという見方を持ち続けました。
赤ちゃん言葉はゆっくりとした話し方で、短く簡単な言葉を繰り返し使い、具体的な内容(今ここで起こっていること)について話します。研究によると、4歳児でもこの方法で自分より小さい子に話しかけることが実証されています。
ピアジェの言語習得理論
スイスの心理学者ジャン・ピアジェによると、 言語と思考はかなり密接に関係するプロセスだと考えられています。認知プロセスと構成がまず起こり、それから言語が出現するそうです。
この適切な認知プロセスの発達によって、言語の出現と発達が可能となります。しかし子どもが一度言語を習得すると、これがより進んだ思考の発達に役立ちます。
「子ども達は自分で考え出したものだけを真に理解している。大人が何かを急いで教えようとすることは、子ども達がそれを自分で再び考えつくのを妨害してしまっているのだ。」
―ジャン・ピアジェ―
ヴィゴツキーの理論:社会構造的アプローチ
ソビエトの心理学者レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーは、子どもの言語と思考は個別に発達するものだと捉えていました。その後に子どもはプライベートスピーチを発達させ始めるということです。つまり子どもは自分に話しかけることで、問題を解決したり顔の緊張をほぐしたりするのです。ですので、言語というのは行動を規制する手段となります。
子どもが4歳にもなれば、言語と思考が合流し始めます。子ども達は、声に出していたプライベートスピーチから、自分の心の中だけで行うものへと移行できるようになります。
それ以降は言語がより知的になり、思考はさらに言語化されていきます。つまり言語と思考が合流するのです。ヴィゴツキーが呼ぶ言語というのは、社会的現象として始まるにも関わらず、最終的には個々の内面的心理現象へと変化するのです。
「思考のない言葉は死んでいる。同じように、言葉を伴わない思考は影から出ては来ない。」
―ヴィゴツキー―
言語習得に関する理論のまとめ
言語習得についての様々な理論の最も認められているポイントを考慮すると、子ども達は言語学習をしようと仕向ける生来の能力を持っていると結論付けることができるでしょう。さらに言語が適切に発達するには、言語と思考の両方が発達できるような適切な環境が子どもには必要なのです。