子どもに見られる多動症とADHDの症状
多動症は、子どもによく見られる行動障害です。 多動症の子どもは、無意識に動きたくなってじっとしていられない、という特徴があります。何か始めても終えることができず、他のことをしたくなって気が散ってしまうのです。
多動症は周りに人がいると症状が悪化し、他人やあまりよく知らない人の前では特にその傾向があります。子どもが一人でいる時は、多動症の症状があまり出ないという特徴もあります。
一般的に、集中や注意が欠如することが多いといわれる多動性(過活動)に加え、衝動性と不注意の症状も見られる場合、注意欠陥・多動性障害 (ADHD)と診断されます。
この障害は診断が難しいですが、特徴的な症状を両親が認識していると早い診断につながります。そのような特徴がお子さんに見られたら、もっと詳しい診断を受けるようにしてください。
多動症の子どもに見られる行動
多動症の子どもに最も顕著に現れる特徴は、集中できないことと、注意力散漫なことでしょう。他にも以下のような症状が挙げられます。
- 混乱している、危険な行動をすることがある、怒られても反応がない。
- いらいらして、落ち着かない。
- 授業中に問題を起こしやすい。
- 衝動的で、指示に従わない。
- 何か不満だと我慢ができない。
- 集中力に欠ける。
- 気が散ってしまい、授業の課題に注意がいかない。
- 過激な行動をする場合もある。
- 自分の発言や行動を抑えることが苦手。
多動症の原因
決定的な原因はまだ解明されていませんが、遺伝要因が大きいのではないかという仮説があります。さらに環境要因として、家庭や教育面、さらに過剰診断が増えている社会的な問題も考えられます。
多動症が見られる子どもは予想以上に多いものです。ある研究によると、7歳以下の子どものうち3%の子どもが多動症と診断され、女の子よりも男の子の方が発症率が高いと言われています。
これまでの歴史の中で、多動症の科学的見解は変化してきました。20世紀初めには、多動性は流行性脳炎と呼ばれる、軽度脳損傷によるものではないかと推測されていたのです。
1937年には、中枢神経刺激薬(アンフェタミン)に多動性の治療効果があることが別の研究の際発見されました。この初期の仮定理論により、脳を刺激するベンゼドリンが使われ始め、初期薬物療法となりました。
薬物療法の場合は、医師の指示に従って、社会心理的アプローチと併用して、治療に取り組むようにしましょう。
年齢別多動症の特徴
子どもの成長と共に、多動症の特徴と思われる行動パターンが変化します。多動症の行動は識別しやすいものです。幼少期から多動性の行動が見られる場合は、医師により症状を見分けることが可能です。
0~2歳
睡眠中のミオクローヌス発作や食欲不振。子どもは短時間しか眠らず、突然起きることが多い。毎日同じ生活パターンになることを嫌がる。聴覚刺激に対して敏感で、音に過敏。
2~3歳
言葉の発達が遅く、多動が顕著になり、危険意識が薄い。何かが危ないということが認識できず、怪我をしやすい。
4~5歳
他の子と友達になることが苦手、反抗的、ルールに従えない。大人に注意されても、注意深く話を聞けない。
6歳以上
6歳以上の多動児の特徴は、衝動的な行動と、学校の成績の伸び悩み。この年齢では注意欠陥が顕著に表れ、他の子どもとの対人関係が困難。
注意欠陥・多動性障害 (ADHD) の特徴
多動性と共に、不注意と衝動性が加わると、医師によって注意欠陥・多動性障害 (ADHD) と診断されることがあります。これは医学的な障害であり、継続的な治療と診察を続ける必要があります。
まとめると、ADHDの子どもの主な症状は:
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
多動症の子どもがすべてADHDではない
上記のような行動パターンのうち、一部のみ確認されることもあります。しかしそれが必ずしもADHDではありません。
幼い子どもは生まれつき落ち着きがなく、衝動的なことがよくあります。課題に集中できない子どもも大勢いる事でしょう。それはある程度までは正常な行動だと言えます。
子どもがADHDと診断されるには、精神障害/疾患の診断・統計マニュアル (DSM-5) の診断基準に当てはまるかどうかで決まります。
- 他の子どもに比べて、行動障害の特徴的行動が明白に表れている。
- 子どもが12歳未満のときに症状が見られる。
- 学校での学習と、家庭や社会での正常な機能に影響を及ぼしている。
- 子どもの生活の質に、影響を及ぼす行動が見られる。
- 別の疾患、薬物の影響、他の精神障害との併存によって起こされた行動ではない。
多動性とADHDの治療法
世界保健機関 (WHO) や日本のガイドラインでは、児童へは心理療法が優先されます。本人の特性に合った環境調整を行い、ペアレント・トレーニングにより保護者への支援を強化します。
よく使われるADHDの薬物療法は刺激薬であり、子どもが集中するのを促します。他の精神障害の特徴も現れる場合は、別の薬を処方することもあります。
同時に心理療法も行い、学校と家庭での生活を組み合わせていくのに役立ちます。そして認知行動療法では、子どもの活動スケジュールを組み、セルフトークと呼ばれる心の言葉を上達させる練習をします。
子どもにこれらの特徴があると気付いたら、診断テストを受けさせることが重要です。子どもはADHDかもしれないし、単に子ども時代を通り抜けているだけかもしれません。
どちらにしても、子どもの行動を分析して、何か変わった行動パターンが確認されるかどうか見てみるのが重要です。
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