胎児の成長を促す、へその緒とその機能について

今回はへその緒の特徴と機能について説明します。赤ちゃんの成長にとても重要な、へその緒に関する情報と、へその緒のケアについてもご紹介します。
胎児の成長を促す、へその緒とその機能について

最後の更新: 31 10月, 2018

へその緒は胎児の発達形成において、とても重要な役割を果たしています。へその緒は赤ちゃんの血液に栄養と酸素を供給する母子に必要不可欠な器官なのです。

両親にとっても、へその緒は意味深いものがあり、日本では記念に保存しておく慣習もあります。また、へその緒の血液を将来の幹細胞の移植治療研究のために提供することも、最近では注目されています。

へその緒:胎児の発達の源

へその緒は50~55 cm程の長さがあります。まるで昔の電話線のように渦を巻いている、10~12回ねじれた、らせん状になっています。

へその緒はさい帯と呼ばれ、2本のさい帯動脈と1本のさい帯静脈が通っています。それら全てがワルトンゼリーという物質でおおわれ、保護されています。

このゼリー状の結合組織により、へその緒は強度を増し、胎内で絡まるのを防ぎます。

さい帯の動脈と静脈は、断面的に見ると3本の血管が三角形になっていて、2本のさい帯静脈が底辺となり、さい帯静脈がその上にある形になります。

へその緒が形成されるのは、妊娠4~8週目の頃です。出産の後、医師がへその緒を切断して、その後赤ちゃんに残った部分 がおへそとなります。

へその緒と共に子宮から胎盤が娩出されると、これらの臓器が生命の誕生に必要な、大事な目的を果たし終わったことになります。妊娠期間だけの特定な機能を充分に発揮して、それが終わると臓器は排出され処分されます。

胎児が子宮内にいる間、へその緒は唯一赤ちゃんに栄養、血液、充分な酸素を供給する、重要な役割があります。母親の胎盤と胎児のおへそをしっかりと結合しているのです。

このような機能があるということは、へその緒は胎児の成長に不可欠な存在と言えるでしょう。

さらにへその緒は、生理学上の母と子の深いつながりを、最大限に表現しているのです。それらの理由から、またそれ以上に、子どもの命を支える基本となるのが母親なのです。

へその緒 と子宮の中にいる胎児

へその緒の機能

胎児の成長に寄与する、へその緒の機能の中から、次の内容を具体的に見ていきましょう。

  • 栄養:へその緒は、妊婦の胎盤から胎児へ栄養を供給します。
  • 呼吸:酸素が豊富な血液を胎児に送るのも、へその緒の役割です。
  • 排出:呼吸により排出された二酸化炭素や、栄養を吸収した後に残った老廃物を、へその緒を通して排出されます。
  • 豊富な幹細胞:胎児の幹細胞は未分化細胞と呼ばれ、別の種類の細胞に分化する能力を持ちます。幹細胞は、心臓や腎臓などを形成する、皮膚細胞や神経細胞などに分化することができるのです。幹細胞を保存すれば、小児白血病、脊髄損傷、心臓疾患などの治療に役立つ可能性があります。
  • 抗体の運輸:妊娠の終わり頃になると、母親の身体はお腹にいる赤ちゃんに抗体を送ります。これは胎児の免疫システムを形成するために貢献します。
  • 他の疾患防止に貢献:ゲノム生物学の報告によると、未熟児のへその緒にある幹細胞を分析することで、呼吸障害である気管支肺異形成症などの、肺の異常を診断するのに役立ちます。

これらの特徴から分かる通り、へその緒は新たな生命を作り出す基本となるばかりでなく、命を救う可能性を秘めているのです。

へその緒の血液、さい帯血を寄付するには、出産後すぐに採血するという、ごく簡単な方法で行われます。(これは出産の事前に話し合い、ドナーとなるための手続きを済ませて下さい。)

へその緒は、生理学上の母と子の深いつながりを、最大限に表現しているのです。

へその緒ケアの手順

赤ちゃんが生まれてから、へその緒のケアについて心配なことがたくさんあることでしょう。さてケアの方法を見ていきましょう。

へその緒をいつ切断するのがいいのでしょうか? 医療スタッフは、赤ちゃんの出産の後、直後にへその緒を切断するのが普通です。

しかし世界保健機構とその他の研究によると、30~120秒待ってから、へその緒を切ることを勧めています。

少し待つことにより、赤ちゃんに送られる血液が減少して、新生児貧血を起こす予防となります。

しかし、さい帯血を提供したいと考えている人は、出産後すぐにへその緒を切断しなければなりません。

へその緒 のケア

新生児のへその緒ケアには何をすればいいのでしょう? へその緒の一部は赤ちゃんのおへそについたままとなり、完全に乾いてから、数日で自然に取れるはずです。

大抵、生まれて2,3日の内にへその緒は取れるでしょう。それまでは、おへその辺りを消毒用アルコール(70%イソプロピルアルコール)をガーゼにつけて消毒してください。

最近の研究では、新生児のへその緒ケアとして、消毒する必要はあまり無いといういう見方もあります。おへその辺りを乾燥させておくこともできます。

それでも、おへそ周辺が完治するまでは細菌が入りやすいので、消毒しておけば細菌感染の予防になります。

新生児をお風呂に入れてもいいのか? 沐浴であれば大丈夫ですが、へその緒の辺りはあまり濡れないようにして、沐浴後にきれいにふいて乾燥させましょう

へその緒が大丈夫かどうか確認する方法は? へその緒の様子が少し変に見える、異様な臭いがする、または出血したり膿のような液が出ている場合は、小児科医に診てもらいましょう。

少量の血が出て、赤い点や血の跡が見られるのは正常ですが、もっとたくさん出血している場合は、すぐに医師の受診をするべきです。抗生物質を処方してもらい、感染を防ぐことができます。


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